申年的セピロク生活

マレーシアのサバ州、セピロクでは、鶏と森のサルの鳴き声でゆっくりと目が覚める。森の木々からの蒸散は空気に満ち溢れ、道行く人の朝の挨拶を朝霧の中に優しく包み込む。今日もまた、一日が始まろうとしている。

                 

セピロクには、3種類のサルがいる。この3種類のサルなしには、セピロク生活を語ることはできない。
サルその1、オランウータン。
サルその2、フィールドアシスタント。
サルその3、セピロクの子供達。

サルその1
Orang Hutanとは、マレー語で、森の人(Orang=人、Hutan=森)を意味する。小さい時には、黒いつぶらな瞳をくりくりさせているかわいらしいオランウータンも、大人になるとかわいくなくなる。というのは、彼らはフィールドワークの妨害が大好きなのである。人間に非常に近い手と、旺盛な好奇心を兼ね備えた彼らは、フィールドワークに使われるテープや網、ポールを取ってしまう。森の中で実験のために埋めたばかりの植物を引っこ抜き、30万円もするデータホグをかんで壊したこともあった。フィールドワークはそんなオランウータンとの戦いでもあるが、森の中に住む最大の霊長類は野生で見るとやはり偉大なのであった。

子供の時は、とてもかわいらしいのだが。。

成熟すると体重は200kgを超え、攻撃されたらひとたまりもない。

サルその2
私は、フィールドアシスタントとして、一時期10人以上の男の人を雇っていた。みんなセピロクで生活している20代の男の人達である。彼らは、小さい頃から森とともにすごしてきた。そして、森から取れる植物、動物、キノコなどの恵みを身近に受けてきた彼らは、森のことを直感的に知っている’森の人’なのである。実際に森の中で、彼らから学ぶことも大きい。最近は、私も彼らと仕事をし、週末のTapai(マレーシアの米から作るお酒)をともにすることが生活の一部となってきた。セピロクで私が一番頼りにしているのが、彼らである。

雨季の時期のフィールドワーク。

サルその3
セピロクでは、一家族の中に兄弟が5人から10人いるのがごく普通である。そのため、赤ちゃんから、2歳半、5歳、7歳、11歳、15歳、、、と途切れなく色んな年齢の子供がいるのである。彼らが騒ぐ様子はまさに好奇心旺盛な小猿そのもので、ココナッツの木に登ったり、逆立ちしたりと常に忙しそうである。こうして彼らは、森の人になっていく。そんな彼らと遊び始めるとすっかり時間を忘れてしまい、気がつくと日が暮れている。

片手逆立ちもお手の物!

仲良し5人組

セピロクの遊び場にて。

今日も一日が終わった。 森の方を見ると、雷が光っている。今日の夜もスコールが来そうである。

このように時間が過ぎていくセピロクで、今年もいい仕事ができますように。

そして皆様にとっても2004年が実り多き年でありますように。
今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

内田あゆほ 2004年元旦