サンタが一ヶ月の仕事を終えて、Tawauから戻ってきたのを、私はその2、3日後に知った。彼は相変わらず静かに家で過ごしていて、私はそんな彼を尋ねた。
’サンタ! Tawauでの仕事はどうだった?’
’あまり、よくなかった。’
とだけ、彼は答えた。
翌週から彼は、私のフィールドアシスタントとして、又働いてくれるようになった。サンタは、静かだったけれども、いつも通り手際よく仕事をこなしてくれた。
ある日フィールドワークが一段落して2人で地面に腰をおろしている時、サンタはTawauでの仕事がどんなだったのかを堰を切ったように話し始めた。Tawauでの仕事は、森林の中でタワーを建てるための縦横2m、深さ1mの穴を掘るもので、高温多湿の劣悪な状況の中一日8時間働いた。寝泊りするところも、森林周縁にある掘っ立て小屋で、毎晩ご飯と野菜なしスープが供されただけだった。
’でも、ちゃんと給料がもらえるならいいと思ってやってた。’
とサンタはため息をついた。
仕事のボスは中国人だった。彼は、毎週末サンタや他のワーカー達を街まで連れ出し、バーでお酒を飲むなどしてその労をねぎらってくれたという。そして、問題は支払いの段になって起こった。中国人のボスは、週末の飲み食い代を差し引いた上で、給料を計算してきたのだった。元々日給600円にも満たなかった給料はその3分の2程しか払われなかった。
’最初からお金が引かれることを知っていれば、週末街になんか出なかったのに、、。どうして、中国人はいつもこうなんだろう。’
サンタは、あきらめと悲しさが混ざり合った様子でいった。
’でも、サンタ、Tawauで怪我しなくてよかった。’
と、私はいった。